大阪高等裁判所 昭和37年(ネ)1498号 判決 1963年11月08日
控訴人 蜂谷ヒサエ
被控訴人 国
訴訟代理人 山田二郎 外三名
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 <省略>
理由
昭和二八年七月二七日附神戸市長田税務署長宛の控訴人名義贈与税申告書(乙第一号証)が提出されたこと、及び右乙号証中控訴人名下の印影が同人の印を以て顕出されたことはいずれも当事者間に争が無いから、同号証は一応真正なものと推定されるのであつて、原審及び当審における証人中浜米次郎の各証言及び控訴人本人の各供述並に之に依り成立を認められる甲第一号証の一乃至七も、之を成立に争の無い乙第三号証、及び原審証人端谷喜雄の証言並に当裁判所が真正に成立したものと認める乙第四号証と比較考察するときは、いまだ前記の推定を覆えすに足りない。従つて右申告が控訴人の意思に反して他人に依り為されたとの控訴人の主張は採用できない。
次に右申告にかかる贈与の事実の無いことを理由に納税義務の存在を争う控訴人の主張に付ての当裁判所の判断は、納税の申告行為が広く一般人に影響を及ぼす行為ではなく、単に納税者と国との間の法律関係に関するものであり、又私人の自発的な意思の尊重を基礎とするものではあるが、他面それが形式と外観を重んずる行為であり、而も相続税法第三二条が一定の期間を限り、更正請求なる手続によつて之を争わしめることとして法律関係の早期確定をはかる建前をとつていることから考えると、この法条による以外に単に申告にかかる贈与の事実の不存在を理由として納税義務の存在を争わしめることは相当でないことを附加するほか原判決の理由二枚目表六行目より同三枚目裏五行目迄と同一であるから之を引用する。
以上の次第であつて控訴人の主張はいずれも採用できないから、本訴請求は失当として棄卸すべく、之と同趣旨の原判決は正当であるから、本件控訴を理由がないものと認め、民事訴訟法第三八四条第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 加納実 沢井種雄 加藤孝之)